魔界学校に棲まう「評価」の不思議!

「EDU PLUS J」 
  CEO SHOICHI SAITO

 

「魔界学校に棲まう「評価」の不思議!

 

「通知票」をどう受け止めるか

~「評価」は子どもをより良く導くための働き、「機能」を持っているものでなければならない~

前回の予告では「学校という名の魔界」に棲まう、「評価」「評定」の不思議!というタイトルでしたが、えっらく長いので、「魔界学校に棲まう「評価」の不思議!としちゃいました。

本の学校では、いよいよ来週一週間で一学期も終了し、児童・生徒は手に手に「通知票」なるものを持って、我が家に帰ってきます。

この学校教育に付きものの一つに、「評価」「評定」があります。しかし、そもそも「評価」は子ども達のやる気を促し、意欲を喚起するものでなければなりません。従って「先生は私のことを評価してくれた!」や「評価されなくてがっかりした!」という表現の意味合いにおいて、「評価」は嬉しいもの、して欲しいものという意味で使われています。

本来の評価は子どもをより良く導くための働き、「機能」を持っているものでなければならないのです。「評価」されることで、やる気を失ったり、自信を無くしたりするぐらいでしたら、評価などしない方がいいのです。評価などせずに、黙って放っておいた方がまだましです。そのような気持ちで、「通知票」をもらう心構えを、子どもも親も持つことが大切です。

 

相対評価」(集団に準拠した評価)の魔力

~全員同じ様にできちゃあ、困るのよ! 差が付くような問題だすぞ!~ 

 しかし、比べることで負けたくないという気持ちや、負けた、劣った悔しい気持ちをバネに頑張ることができるというのも、子ども達の潜在的に持っている素晴らしい力であり能力です。ですから、その場合は優劣をつけます。これが「相対評価」(集団に準拠した評価)です。

国学力学習状況調査や、民間テストである教研式標準学力検査「NRT」はこれにあたります。特に「NRT」は前年度に学習した内容の定着度が、日本の全国平均と比較できるため、海外で暮らす子ども達には参考となり、意義あるものと言えます。ダブリン日本子女補習校でも、これを採用し毎年実施しています。北海道、札幌では文化協会の学力テスト(道内だけで実施されている地域限定のテスト)が普及しているため、実施している学校はあまり無いようです。
 ところで、問題の内容なのですが、従ってはじめから子ども達に「差」が付くような問題になっています。集団の中での位置(優劣)を定めなければならないからです。殆ど満点、ほとんど零点では、集団の中での位置が分かりません。また、問題も日本の教育大学附属学校の教員が中心となって、問題作成を行っています。附属の子ども達が出来たり、出来なかったりするだろうという感覚が問題作成者の側にありますから、いきおい難しかったり、絶対的に時間が足りなくなったりします。ですから「NRT」の平均点はどの学年も50点前後となるように予想して作成し、結果もやはり50点前後となっているのです。

現在の学校の評価は絶対評価 ~評価のインフレ状態がどこでも起こっています! 5の価値は昔と大違いです!

 一方、現在の日本の学校の評価(通知表も含めて)は絶対評価(目標に準拠した評価)で行われています。絶対評価の特徴は、集団の中での位置(優劣)を定めなくても良いのです。学習目標に到達していれば、(問題が出来ていれば)人数に関係なく高い評価を与えることができます。期末テストはこれに当たります。

 実際に私が校長として勤めた日本の中学校では、教科によっては学級の全生徒35人中、評定5がなんと20人以上の教科がいくつも ありました。(20年程前までは相対評価でしたので5は学級に3人程度でしたから、隔世の感があります)個々の子ども達の努力が評価・評定にストレートに結びつきやすくなります。また、教師の側も5を出しやすいのです。(実技教科などは、総じて評価の高止まり、インフレが起きています)

 

内申点」の不思議! 3年生の時だけ良ければいいの? 

 はい!そうです! え~!? 大都市は総じてそうなのです!

「評定」は文部科学省の定める学習指導要領に基づいた、各教科の観点別評価(国語科であれば「①関心・意欲・態度、②話すこと・聞くこと、③読むこと、④書くこと、⑤言語事項」の5観点)を総合した、「5・4・3・2・1」の数字の値で示されます。

中学校であれば、この評定の合計点が、高校入試などでの合否選抜で用いられる、いわゆる内申点(個人調査書)となります。

 実はこの内申点ですが、なんと全国の都道府県によってその扱いには差異があります。札幌市の場合、(他、秋田県広島県等)この「内申点」(3年間の全ての学年毎の成績の合計点)と「入試点」(高校入試当日のテストの得点)の総合点で、公立高校の合否が判定されます。

 しかし、東京都、大阪府兵庫県など他の都府県では3年生の時だけの評定しか内申点として使用されません。札幌市の場合はその比率は5対5ですが、東京都の場合(第一次募集・分割前期は原則3<内申点>:7<入試点>、分割後期・第二次募集は原則4<内申点>:6<入試点>)となり、試験当日の入試点重視となっています。(どちらが良いかというよりも、地域性や私立学校との関係に起因するようです。)

 いや、はっきり言いましょう。大都市圏では私学(中高一貫有名進学校等)優位で、公立学校が信用されていないのです。それは、高校の側からしても同じ見方であって、公立中学校の評価が信用ならないと思われているからです。


 その他には、推薦入試という選抜方法も併用されます。東京都の場合、(定員の20%~30%を推薦生徒として合格させます)。検査内容は内申点50%、他の50%は面接、集団討論、《小論文または作文、実技、学校設定検査のうち一つ以上》の点数となっています。(※一部の高校で,面接の一部に「自己PR」,「パーソナル・プレゼンテーション」,「英語による問答」等を行っています)
 都道府県別の選抜方法は、教育教材出版会社のHPの一覧が分かりやすく、参考になります。                     (www.sing.co.jp/info/exam_info/selection_index.html)
 

 ところで、この「5・4・3・2・1」の評定ですが、一学期、二学期、三学期と、学期毎に学校から「通知表」として貰って来るきまりになっていると思われていないでしょうか。
 実はそうではありません。極端に言えば、「通知票」は一学期が終わっても生徒へ出さなくて法令上は良いのです。法令に定めたれた学校公簿「指導要録」では一年間分のまとめの評定を、記載するようになっているだけです。ですから、日本の多くの学校で「通知表」として学期毎に出している評定はあくまでも仮評定です。児童・生徒の意欲付けや現在の生活・学習の様子を知り、次の学期の奮起を促すために、各学校では学期毎に出しているところが多いのです。教科によっては各学期毎の評価ではなく、一年を前期と後期に分けて、二回しか出さないとしているのはそのためなのです。

 

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