新しい時代の資質能力~ことば(母国語)の力の育成こそ~
「EDU PLUS J」 CEO SHOICHI SAITO
新しい時代の資質能力~ことば(母国語)の力の育成こそ~
「教育」EDUCATIONにおいて、その最も深遠なるもの。
その一つは「ことのは」。言葉でありましょう。
母体に抱かれた時からずっと聴いてきた音の波、「ことのは」。
それは、やがて母の唇から伝え聞く母語「Mother tongue」となり、思考の全てを司るのです。
新学期のスタートにあたり、ここIreland在住の子ども達にも、全教科の教科書が外務省大使館を経由して届けられます。(実際、大使館へ出向き4箱もの段ボールを校長宅に一時保管して、始業式にまたそれを学校まで運び、というアナログな作業の果てに、ですが)
教科書を私が担当している中学2年生に配った時のことです。
新しい学年になった喜びと一緒に、次々に各教科の教科書に目を通していきます。
組・名前を書いていた時、
一人の生徒が、隣の生徒に、ある教科の教科書を持ってこう言いました。
「みて、みて、2年生になっても、こんなことやってる!」
「この教科書いらないんじゃない!」
笑いながらでしたので、冗談交じりではあったのですが。
その通りだと私も思いました。
もちろん、その教科は「英語」。英語の教科書を最後までパラパラと見て、この程度の内容は全てわかる、できると思ったのでしょう。
Irelandの現地校では、この子達は月曜から金曜まで、All Englishで全ての授業を受けています。
では、日本の子ども達もこのIrelandの海外子女に負けないように、もっと英語の授業時数を増やして、他の教科をドッサドッサと容赦なく削って、、、。
何か変だと思いませんか。
追いつけません絶対に。授業時間をどれほど増やしても、目の前のこのIrelandで学ぶ子ども達に。それどころか、他の教科の学力低下は言わずもがなでしょう。
しかし、日本の新しい学習指導要領(全国の義務教育諸学校の指導内容の基準・規準を示しています)は、同じ事をしようとしています。特に、小学校ではそれが著しく甚だしい。
中学校では、旧学習指導要領で、すでに英語が全教科の、どの教科よりも授業時数が多いのです。1年生から3年生まできっちり、一週間に4時間づつあります。日本語である、母国語の国語がそれより、少ないのです。(3年生は一週間に3時間しかありません。しかも1,2年生の一週間4時間は書写の時間を含めてです)
日常会話ぐらいは、大人になってからでも短期留学や、ホームステイ、長めの旅行をすれば、話せるようになります。一般的な日本人はそれで十分じゃないですか。(私が、現にそうです。二ヶ月ちょっとしか経っていませんが、日常英語で不自由することなんてありません。丁々発止の難しい商談をするわけでもありませんから。)
育てるべきは、英語であれ、日本語であれ、手話であれ、それらの手段を使って、他者とコミュニケーションをとろうとする態度、姿勢、心ではないのでしょうか。
それは、何によって育まれるのでしょう。
日本語、母国語、国語ですよね。
幼児から始まる、読み聞かせ、小学校での美しい発音、声の響き、朗読にたっぷり浸ってこそ、中学での言葉による芸術、文学、文芸に感動したり、伝え合うことの喜びに心震わせることができるのではないでしょうか。
「EDU PLUS J」は国語の再興を訴えます。
その国のことばが失われたとき、その国は無くなるのです。
そのための一冊のご紹介です。私の専門は国語教育です。(それ以外にも、読書教育、図書館教育、絵本指導、海外子女教育等、色々手を広げていますが)
私が日本にいるときの刊行物で、最も新しい書籍です。
明治図書刊「深い学びのある国語科授業づくり」~6つの観点・10のクエスチョンと12の実践提案 齋藤 昇一 監修 / 市川 恵幸・高橋 伸 編著
私は、北海道国語教育連盟という、小学校と中学校が一緒になった国語教師の全道組織の委員長を務めていました。この国語教育連盟の総力を挙げた一冊です。附属小・中をはじめ、道内各地の第一線、第一級の執筆者に分担執筆をお願いしました。
また、編著者には市川君、高橋君の最も私の信頼するお二人にお願いしました。
奇しくも、この四月から私はDublin日本人学校補習校へ、市川君は札幌市教委へ幹部として再び教育委員会へ戻り、高橋君は札幌国際大学の人文学部・現代文化学科の教授に請われその職に就き、三人が三人ともそれぞれの道を歩んでいます。三人が共に同じく時と場を共有することが出来たからこそ、実現した一冊です。
教員のみならず、ご家庭でどのような言葉の育み方があるのか、とても参考となる一冊となっています。日本全国の書店でお求め頂けます。ネットでの購入も可能です。全ての子どもに真の母国語、ことばの力を身に付けるため、ぜひお買い求め頂ければ幸いです。
05/06/2019 「EDU PLUS J」 CEO SHOICHI SAITO